当科の活動・コラム
成長期の子どもと電子メディア
平成27年5月28日の山陽新聞に「スマホ子守」というテーマで当院の活動記事が掲載されました。山陽新聞には「子どもが危ない:深刻化するネットの闇」というテーマで、取材をもとにした記事が連載されています。今回も記事の掲載にあたり、医師・看護師・管理栄養士・保育士で最近の子育てや、病院で目にする電子メディア接触の状況などについて座談会を開催しました。記事にはここ1.2年で目にするようになった待合でのスマートフォンを手にする親子の姿や、入院中の児が無言でスマートフォンを操作する姿に小児科医師として危機感を感じ、実態調査を踏まえた健康教室を昨年8月にを開催した事、宮島医師の「子どもとしっかり向き合い、話を聞いてやる事、スマートフォンでは代用はできない」の言葉などが掲載されています。
新聞には掲載されませんでしたが、座談会では電子メディア漬けにならない家庭での工夫や、取組みなども話題となりました。
その内容を紹介しますので、ご家庭での参考にして頂ければと思います。
- 休日は出来るだけ外遊びをしたり家族そろって出かけている。
- 早寝の習慣づけ。
- 子どもが寝てからテレビなどを見ている。
- 食事の準備などを子どもに手伝って貰う。
- 絵本、本など図書館で借りている。
- 食事の時間はテレビを消して、一日の出来事を話すなど、コミュニケーションの時間にしている。
- どうしても見たいテレビ番組は、録画をして日曜日などにみる。
電子メディアと上手く付き合い利用していくためには、電子メディアによる悪影響にも目を向け、コントロールしていく必要があります。
特に周囲の影響を受けやすい成長期の子どもたちは、乳幼児の早い時期からの電子メディアとの接触や長時間の接触は避けたいですね。各家庭できちっとしたルールを作ったうえで利用する事が望ましいです。
電子機器の発達に伴い、子どもたちが電子メディアに接する機会が格段に増えてきました。
長時間の電子メディア接触は心身の成長発達への影響が懸念されます。
当院でも健康教室で上手な電子メディアとの関わり方について取り上げました。
当院の事前アンケートの結果より
3歳から
ゲーム機を使用し始める子どもが多くなる
小学生低学年
65%が
ゲーム機を持つ
小学生高学年
ゲームに加えパソコンを使う機会が増える
中学生
60%がパソコン、タブレットを使用
結果より、電子メディア接触の低年齢化、インターネット利用により無制限の外部との接触が容易になった事での情報モラルなどの問題点が明らかになりました。
成長発達段階での電子メディアの問題点は?
- 電子メディア接触の低年齢化、長時間化
- 電子メディアの内容(暴力映像など)
電子メディア漬けの影響は?
- 心が育たない
- 言葉の発達が遅れる
- 視力、立体視が育たない
- 体力、運動能力の低下
- 音と環境のゆがみ
- 生命感覚、身体感覚のゆがみ
- 生活習慣や伝承文化が育たない
- 生活リズム(食べる、寝る、遊ぶ)の乱れ、特に夜更かし
電子メディア中毒の予防と対策
電子メディア中毒が疑われる症状をチェックしてみましょう
- 約束の時間になってもやめない
- 話題がテレビ、ゲームに偏る
- スイッチを切ろうとする、あるいは切ると泣く、怒る、暴れる
テレビ、ゲームとの接触の注意点
- 朝からテレビ、ゲームは長時間の接触となるため止めましょう
- 幼児期からゲームをする事は控えましょう
「ノーテレビ・ノーゲーム」を始めよう
- 食事の時はテレビOFF
- 月に1日はノーテレビデイを
- 年に1回は1週間続けてノーテレビ
ノーテレビの効果
- 朝からテレビなし・・・朝の準備、食事が早くなる
- 視線が周囲の人や外に向き、会話が生まれる
- 帰宅後、時間の経過がゆっくりと感じられ、心に余裕が生まれる
- 食事中にテレビがついていないと、味や匂いや舌触りをしっかり感じて噛む回数が増え、食卓に会話が生まれる
- いつもより早く寝る
体を動かして友達や家族と遊ぼう・・・心と体の健やかな成長
友達や家族みんなと会話し群れて遊ぶ
心をつくる
お互いに感じる力、話す力、
一緒に楽しむ力、頑張る力
体をつくる
筋肉・体力・器用さ・持久力が発達、
骨・体の成長
感覚を磨く
見る、聞く、味わう、触れる、臭う
・・・五感を磨く
心と体が成長し自立へ
電子メディアとの付き合い方・・・親子でルール作りを
~日本小児科医「子どもとメディア」対策委員会より提案~
- 2歳までのテレビ、ビデオの視聴は控えましょう。
- 授乳中、食事中のテレビ、ビデオの視聴は控えましょう。
- すべてのメディアへ接触する総時間を制限する事が重要です。 1日2時間までを目安、ゲームは1日30分を目安と考えます。
- 子供の部屋にはテレビ・ビデオ・パソコンを置かないようにしましょう。
- 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールを作りましょう。
電子メディアなしでは生活が成り立たない現代で、上手く付き合っていくルール作りは、小児期から、
社会全体で取り組まなければならない問題となっています。
この特集が、ご家庭で電子メディアとの関わり方を見直すきっかけとなれば幸いです。
アレルギーと上手につきあおう
平成27年8月26日に当院5階の多目的ホールにて、第7回となるこども健康教室を開催しました。
今回は「アレルギーと上手につきあおう」をテーマに、1部が小児科 林知子医師による「食物アレルギー~正しい知識が治療の第一歩」、小児科看護師による「症例から見た食物アレルギーの経過について」の講演、2部ではブースに分かれて「健康な肌を保つためのスキンケア」、「管理栄養士による食物療法のこつ」を、実演を交え説明しました。110名を超える方に参加して頂き、実りある健康教室となりました。講演の内容を少しご紹介します。
食物アレルギーとは
食物を食べたり、触ったり、吸い込んだりして起きる体に有害な反応で、アレルギーのしくみが働いているもの。
症状 → 全身への多彩な症状
神経
元気がない、ぐったり
皮膚
かゆみ、蕁麻疹、発赤、湿疹
消化器
腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
循環器
手足が冷たい、血圧低下
呼吸器
のど・胸の締め付け感、かすれ声、咳嗽、喘鳴、呼吸困難
粘膜
鼻(くしゃみ、鼻汁、鼻閉)
目(結膜充血、痒み、まぶたの腫れ)
口(口の中の違和感、唇の腫れ、のどの痒み、イガイガ感)
全身
アナフィラキシー、アナフィラキシーショック
アレルギーを起こす頻度の高い食物
乳児期~幼児経
鶏卵、牛乳、小麦など
学童~成人
甲殻類、魚類、小麦、果物類、そば、ピーナッツなど
消化器
腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
治療
食事療法が基本
正しい診断に基づく必要最小限の原因食物の除去(薬物療法は食事療法の補助治療)
食物アレルギーの診断から解除の流れ
アナフィラキシーとは?
抗原等の侵入により複数臓器に全身性に症状が引き起こされ、生命に危機を与えうる過敏反応。血圧低下や意識障害を伴うものをアナフィラキシーショックという。
アナフィラキシー発症時の初期対応
- そばを離れず観察
- 助けを呼ぶ
- アドレナリンの筋肉注射(エピペン)を打つ
- 仰向けにする
- 救急車で医療機関へ
食物依存性運動誘発性アナフィラキシー
原因食物摂取後、4時間以内の運動で発症することが多い。男児に多く、原因食物は小麦・甲殻類が多い。
治療・・・薬物治療
アドレナリンの筋肉注射(エピペン)が第一選択
※まずは発症予防のための生活指導が大切
当院負荷試験の流れ
- 小児科外来受診、診察
- 同意書など書類の確認
- 急変に備え血管確保
- 3階へ移動
- 医師が負荷量を決める
- 負荷後15~20分毎に症状チェック、医師による診察を行う
- 最終摂取終了後1時間まで症状がなければ昼食を取る
- 13時30分~医師による診察
- 帰宅
※負荷後は24時間以内に症状が出現する可能性がある為、対処方法を説明します。
当院ではアレルギー外来を設けています。アレルギーに関してのご相談はアレルギー外来の予約をお願い致します。
救急対応が必要な状態
下記の場合はすぐに救急車を呼びましょう。※呼吸をしていない場合は、すぐに心肺蘇生を開始して下さい。
呼びかけに反応しない。
呼吸をしていない。
5分以上けいれんが続いている。
下記の症状がみられる場合は早めに受診しましょう
ぐったりしている
いつもと泣き方が違う。あやしても泣き止まない。
顔色が悪く、肌に張り、つやがない。
お乳、飲み物を全く受け付けない。
おしっこが出ない。
嘔吐下痢が止まらない。激しくおなかを痛がる。
息がゼーゼー、ヒューヒュー苦しそう。咳がひどい。
高温多湿の場所に長時間いたあとの高熱。
生後3ヶ月未満の発熱(38℃以上)
プールに入っても大丈夫?
夏に多い皮膚感染症についてご紹介します。(日本臨床皮膚科医会・日本小児科皮膚科学会・日本皮膚科学会の統一見解より)
とびひ(伝染性膿痂疹)→プール×
かきむしったところの滲出液、水疱内容などで次々にうつります。プールの水ではうつりませんが、触れることで症状を悪化させたり、ほかの人にうつす恐れがありますので、プールや水泳は治るまで禁止してください。
水いぼ(伝染性軟属腫)→プール〇
プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル・浮輪・ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共有することはできるだけ避けてください。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。
あたまじらみ(頭虱)→プール〇
アタマジラミが感染しても、治療を始めればプールに入って構いません。ただし、タオル・ヘアブラシ・水泳帽などの貸し借りはやめましょう。
アトピー性皮膚炎とは
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎乳児期に多くみられるアトピー性皮膚炎とはかゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりする病気
症状
皮膚のバリア機能低下のため、外部から刺激が入り炎症が起こりやすい。水分が逃げて乾燥しやすい、かゆみがおこりやすい。
治療
薬物療法、スキンケア、悪化要因(ダニ、ハウスダスト、カビ、細菌、花粉、汗、ストレス)の対策